ブレーキ豆知識 交換促進ペーパー
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第10号掲載
ブレーキペダルを踏むと一回だけ深くペダルが沈み込み、2回目からはペダルが沈むことなく正常に戻る。しかしブレーキを使わず長時間走っているとまた同じ症状が・・・
そんな症状をお客様から訴えられたことはありませんか?

さてここで問題です!!
希に起こるこの症状、運転している人にとっては非常に不快ですしブレーキの効くタイミングが一瞬とはいえ遅れる危険な状態です。なぜペダルは1回だけ深く沈み込むのでしょうか?

答え


この現象は「ノックバック」と呼ばれるものです。「ノックバック」は、パッドがローターにより叩かれパッドとローターのクリアランスが正常時より大きくなり過ぎた時に起こります。

パッドが戻されると言うことは当然ピストンも押し戻されシリンダー内のブレーキフルードはリザーバーに多く戻っていくため、この戻ったブレーキフルード分を押し出すだけブレーキペダルは通常よりストロークを必要とすることになります。

なので一度ブレーキを踏めば、戻りすぎたフルードがシリンダーに帰るので二度目にはこの現象が発生しません。しかしブレーキを使わず走行している間にまたクリアランスが大きくなり同じようなことが起こります。

原因は、ローターの振れが大きい、キャリパーの作動がおかしい(ピストン部あるいは摺動部)、パッドの片減り、パッドを押さえているクリップのへたり等が考えられます。対策は、ローターの交換(又は研磨)、ブレーキのオーバーホール、パッドやパッドクリップ交換などが考えられます。

多くの場合はローターの振れによりパッドが戻される事が原因となることが多く、ローターの交換で直ることが多いようです。
第9号掲載
ディスクブレーキは、ディスクローターをパッドで挟んで止めます。そのためディスクローターとパッドは擦れ合いディスクローターの表面は綺麗な金属面となりホイールの隙間から見えるときがありますよね。さてこのディスクローターですが、ホイールの中を覗いて見たところ、いつの間にかレコード盤(知っていますよね!)のような傷が発生!

さて、ここで問題!! この傷の原因は何でしょうか?

答え


その傷はスコーリングといいます。
発生の原因は、

1. パッド原材料による影響
研削成分(削る成分)が熱を受けることにより酸化し、ロ−タ材質より硬くなるためスコ−リングが発生する。
2. ディスクロ−タによる影響
削られたディスクロ−タ(鉄分)が、パッド面に付着し同種摩擦(同じもの同士が擦れ合うこと)により摩耗が促進しスコ−リングが発生する。
3. 外的要因
走行中に砂,砂利等がロ−タとパッドの間に入り込みディスクロ−タを削る。


ディスクローター表面は、平滑であることが性能を発揮する条件のひとつとなります。スコーリングが発生したらすぐに上記項目を確認してください。
症状がひどい時はディスクローターの研磨(最小厚みに注意)とブレーキパッドの交換をお願いします。
第8号掲載
今回はパッドの相手であるロータの豆知識です。国産車のロータは一度も交換しないまま廃車になってしまうことも多く「消耗品」という意識が薄いかと思いますが、欧州車の中にはパッド交換2回につき1回のロータ交換を実施するケースが多く「消耗品」という考え方が浸透しています。日本でも雪国や海辺のそばでは、ロータ研磨や交換の実施頻度は高く「消耗品」という位置づけになっているようですね。

さて、ここで問題!! ディスクロータはどうして「消耗品」なのでしょうか?

答え


ディスクロータが何故「消耗品」かと言いますと、「摩擦が生じる⇒パッドが減るでなく相手材のロータも削ってしまう」からです(基本的にはパッドが減りますが)。

ロータ表面が削れて段付きや肉厚差が生じると、鳴きやジャダー(振動)、異常摩耗等が生じやすくなります。又、使用状況が過酷だとロータが変形(熱倒れやうねりなど)して鳴きや異音が生じたりします。その際はロータの研磨が有効です。但し、有効厚さ(ロータの側面などに明記してあります)の限度を超えた研磨はNGです。交換して下さいね、割れちゃいますから!!

国産車は比較的ロータ攻撃性の少ないパッドが使われているためロータも削れてしまうことは少ないのですが、効きの高いスポーツ用のメタリック系のパッドを装着している場合は2車検に1度は交換した方が良いでしょう。
第7号掲載
ブレーキフルードを購入される際、基準とする項目として「DOT規格」「BF規格」があり、ラベルを見ると「ドライ沸点・ウェット沸点」が記載されています。

さて、ドライ沸点・ウェット沸点とは何でしょうか?

答え


ブレーキフルードは非常に吸湿性の高い液体で、水分を含むと沸点が低下しベーパーロックが起きやすくなります。その性能を示す規格がドライ沸点・ウェット沸点です。

ドライ沸点  ⇒ 水分の混入率が0.1%以下の沸点
ウェット沸点 ⇒ 水分の混入率が3.5%時の沸点


以前、規格が作られた頃は2〜3年通常使用したフルードの水分混入率は3.5%前後と言われていました。ところが最近の車両はリザーバータンク(フルードを溜めておくところです)のシール性も向上し、ブレーキフルード製造元からの情報によると、2〜3年通常使用したフルードの水分混入率は1〜2%程度との事です。

車両側の対策もされていますが、やはり劣化するもの。
2年を目安に(黒褐色や異常な濁りを確認した場合は直ぐに)交換しましょう!

[参考]
DOT3⇒ドライ沸点:205℃以上、ウェット沸点:140℃以上
DOT4⇒ドライ沸点:230℃以上、ウェット沸点:155℃以上


第6号掲載
「偏摩耗」「早期摩耗」と、通常とは違う摩耗状態を表す言葉は結構あります。
最近では「斜め摩耗」と言う言葉がよく使われるようになりました。さてこの「斜め摩耗」とはどの様なものでしょうか?

答え


書いて字の如く、これはPADが斜めに摩耗してしまう事です。以前はこのような状態も「偏摩耗」と呼ばれていましたが、この「斜め摩耗」は、キャリパがねじれるほど強めなブレーキを繰り返し行う事で、斜め摩耗が発生し、摩耗が大きくなると次の不具合の素になる事があります。

・ペダルストローク量増による効き低下感
・引き摺り増による燃費の低下
・上記による、ロータ肉厚差増大→ジャダー
・鳴き異音感度増
・低液圧時ジャダ感度増

元々ローターとPADは0.2mm程度ほぼ0タッチのところ、1〜2mmの斜めが生じてしまえば、開放時の引き摺りが大きくなり→ノックバックによりピストンが戻される→次回制動時ペダルストロークが大きくなると悪循環を起こしてしまいます。

もし「斜め摩耗」が始まっていたら速やかにPADを交換する事をお奨めします。そのまま使用した場合「斜め摩耗」は大きくなる一方でもとの正常な状態に戻る事はありません。ペダルフィーリングが悪くなったり、最悪はローターとメタルタッチを起こす場合があるので注意が必要です。

第5号掲載
今や最高時速400kmも可能なレーシングカーの世界。これだけの高速域から短時間で減速するためのブレーキも通常の車に使われているブレーキとはかなりの違いがあります。
レーシングカーのブレーキキャリパはオポーズドタイプ(対向ピストンタイプ)が多く採用されていますが、なぜでしょうか?

答え


オポーズドタイプのキャリパブレーキは、2枚のブレーキパッドを各々のピストンによりブレーキディスクに押し付けます。

それに対してフローティングタイプのキャリパブレーキは内側にあるピストンで内側のパッドを押し付け、その反力でキャリパボディの外側にある爪部が外側のパッドを押さえつけるために効き始めのタイミングが若干遅れます。この遅れは、通常の走行では全く気になるレベルではありませんが、レースの場合は、この僅かな遅れが、ブレーキを踏んでいる時間が長くなったり、制動距離等に影響してしまうことがあるために効きの遅れの少ないオポーズドタイプが採用されています。

発熱量が多いため、ブレーキキャリパ内に水を通すラインを設けて水冷で温度を下げる機能を持ったものさえ有ります。この機構もオポーズドタイプだから出来る事です。

又レース中にパッドを交換する際に、上側のピンを抜けば直ぐにパッド交換が行えるということも理由の一つと考えられます。

レースの世界は1分1秒を争う世界ですからこのような微妙なことでも大変重要になります。

第4号掲載
今回はブレーキを作動させるために無くてはならない、例えれば人間の血液のような役目をしているブレーキフルードについての豆知識です。

1. ブレーキフルードには、その性能を示す規格(ドライ沸点・ウェット沸点)によりグレード(BF3、BF4(DOT3、DOT4と呼ぶものもあります))があります。そのグレードの異なるものを混ぜても問題はないでしょうか?
2. ブレーキフルードが塗装面に良くないと聞きますが、それはなぜでしょうか?
答え


1. 混ぜても問題はありません。(但しメーカーの異なるもの、ベース材の異なるもの(グリコール系・シリコン系)を混ぜると問題となる可能性が高くなりますのでおやめください)

しかしこの場合、性能通りの効果を得る事ができません。例えばBF3と4では、吸湿性自体は変わらず、原料も変わりません(添加物は変化する)ので混ぜても問題にはなりません。BF3(平衡還流沸点 ドライ205度以上、ウエット140度以上)に高沸点のBF4(平衡還流沸点 ドライ230度以上、ウエット155度以上)を混ぜても問題にはなりません。

但しBF3に高沸点のBF4を混ぜても、BF4の効果は得られません。(BF3になる訳ではありませんが、折角なら全量交換したほうがいいです。)高速道路での移動、あるいは重い荷物を運ぶ、山岳地区での使用が多い場合などは、やはりBF4の方が信頼性は高く、フルードの沸点等を確認した時にその当たりをエンドユーザーにアピールして、販売に繋げて行くことをお奨めします。

2. ブレーキフルードの主原料であるグリコール系は、塗料を溶かしてしまうからです。ブレーキ整備をしているときに、何らかの理由によりブレーキフルードが塗装面についた場合、速やかに水で洗い流してください。そのまま放っておくと塗装面が侵されてしまいます。またシリンダー回りに付着したブレーキフルードは、ブレーキクリーナーで丁寧に洗浄してください。但しその際、ゴム部品に付着するとゴムが膨張したり大変危険なので、かからないようにしてください。

マスターシリンダーカップを組み付ける際には、ブレーキフルードを使わずに専用組み付けグリースを使用すると便利です。これは、ブレーキフルードに完全に溶ける成分となっていて作業性がよくお奨めします。もし、一般ゴム用グリースを使用するとブレーキフルードに溶解せずにスラッジとなり、大切なポート(穴)を塞ぐ恐れがありますので注意が必要です。
第3号掲載
ブレーキパッドと言えば、4輪ディスク車の場合フロント側が先に摩耗するのが半ば常識ですが、最近の車両の中にはリア側か先に摩耗してしまい交換するケースが多くなってきています。

さて、何故リアを先に交換するケースが多くなってきているのでしょうか?

答え


最近の車には高級車やハイパワー車に限らず安全性を考慮してトラクションコントロールが装備されている事が多くなりました。

トラクションコントロールと言えば、エンジンの出力を制御してタイヤの空転を押さえていましたが、アクセルを踏み込んでもトラクションコントロールが効くとエンジンの出力を落としてしまうため、「エンジンが吹けない」、「エンジンが壊れている」と言うような苦情が多くなってきました。

そこでエンジン出力で制御するのを止めて、ブレーキを制御することで空転を防ぐ様に変わり始めています。これがリアパッドの摩耗を加速させる原因になってきているのです。
リアのブレーキサイズは従来と同じ、特にFR車では駆動力が伝わっているリアドライブにドライバーがブレーキを踏まなくてもブレーキが使われる事が多くなっているのです。

もしブレーキの警告灯がついている場合、フロントパッドを調べがちですが、それでフロントパッドが充分残っていても「故障かな?」「不思議だな?」と思わずリアのパッドの摩耗状態を調べる事が大切です。

*トラクションコントロールには総合車体制御装置も含まれています。

第2号掲載
ブレーキが効かなかったら さあ大変!!
でも現在の車は、ブレーキが完全に効かなくなる(全失陥なんて呼んでいます)事がないように配管を2系統にする等の安全策が講じられています。
もしそれもダメだったら・・・・

緊急の場合パーキングブレーキでクルマを止めることができるでしょうか?
答え


パーキングブレーキの本来の目的は、名前の通りクルマを駐車した際に動かないように止めておくためのものです。レバー(最近はフットペダルのものもあり)を引くとケーブルが引っ張られてブレーキが機械的に掛かります。

日本の法律(道路運送車両法)では20%の坂でも動かないように、初速30km/hから減速度1.5m/s2以上又は26m以内で止まるように定められていますので、速度さえ30km/hぐらいまで落とせれば止めることは可能です。
第1号掲載
ブレーキパッドは減りますよね〜。何で減るんでしょう??
摩擦が生じれば、消しゴムや鉛筆と同様に削れて減っていく物ですが、パッドの摩耗と使用状況(乗り方、環境など)はひじょ〜に繋がりが深く、特に摩擦表面の温度との関係はパッドの寿命に直結してます。
さて、ここで問題!!
実際街乗りで使用する温度域はどの位でしょうか?
答え


通常、街乗りではいいとこ120〜130℃付近の温度域で使用されています。頻繁に山登りされる方や、少し過激な運転をされる方は、やはり温度も高くなりパッドの減りも早くなります。

参考までに、山道を上り下りすると200〜250℃付近(山を削った新興住宅地なども意外に過酷です)まで上昇します。走行距離と減り具合・車の使用用途から、適切な交換時期を考えて交換をお薦めします。減りすぎたパッドを使用していると怖い目に遭いますよ!

:経験者談 (^^;